PTAの任意加入に関する法的根拠は?

PTA

そもそもPTAの加入は強制なの?

結論から申し上げますと加入は強制ではありません。その法的根拠や訴訟事例などについても
調べてみました。

そもそもPTAの組織って?

PTAの成り立ちについてはかなり詳しく記事を書きました。(くわしくはこちら
3行でまとめると、

  • PTAはアメリカの社会改革運動の中で崇高(すぎる)な理念のもと設立された
  • 戦後、GHQが教育の民主化を目的に、PTAの設立を文部省に働きかけ急速に増えた
  • 急いでつくったので崇高な理念よりも戦前からの資金援助、学校への奉仕活動がメインになった

こんな感じです。

では、戦後GHQが主導したPTAの組織というのは法律的に見るとどんな組織でしょうか?
一般的には「権利能力なき社団」として位置づけられています。
簡単に言うと法人格を持たない団体なので、例えば銀行口座をつくろうと思うと代表者名で口座をつくる必要があったり、特別な法律がなければ決め事はメンバー内で決めていくしかない団体になります。
労働組合も「権利能力なき社団」なのですが、「労働組合法」という法律があるのでその法律に
沿った行動をする必要があります。

PTAおじさん
PTAおじさん

え?じゃあPTAってルールはどうやって決めるの?

組織の内部で決めていく必要があります。。。要するに自発的な組織なんですね。
なので、法的な強制力ではなく参加者の自由で自発的な意識で。。。

ショックなおじさん
ショックなおじさん

いや、無理あるって!

調べれば調べるほど任意加入に関する議論というのは起こるべくして起こった問題だと
わかります笑。また、保護者と教員の組織であるPTAですが、学校からは完全に独立した
組織であることも留意する必要があります。役員をされたことがあればわかりますが、
学校から保護者の許可なく個人情報をもらえば個人情報保護法違反になる可能性があります。

Gメン
Gメン

え!独立した組織?いつも学校のPTA室で
いろいろやってるけど法律違反ですか???

いいえ、それは大丈夫です。PTAは学校から独立した団体として、学校教育法第137条に基づき、社会教育その他公共のための利用として許可を得て使用している立場です。

社会教育関係団体でもある

上記の通りPTAは任意の団体です。なので、強制加入なんてなんの法的根拠もありません。
また、PTAは社会教育関係団体としても位置付けられています。この意味をものすごーく簡単に
整理するとPTAはすべての子どもたちを対象にした団体です。ということです。
PTAの加入者と非加入者を区別はしていません。していませ。していま。。。。

追いつめられる人
追いつめられる人

PTAは加入している人、していない人関係なく
すべての子どもたちのためにあります!

とある保護者
とある保護者

おい、加入していない人に卒業記念品贈るのは
おかしいだろ!

とある保護者
とある保護者

私は上級国民だぞ!
誰がそんなこと決めたんだ!

いや、これ結構ふつうのこといってますよね?モンスターじゃないじゃん笑
ごめんなさい、本当に無理がありすぎです。全員が昔から変わらず加入していれば問題はなかった
ともいえるのがこの問題の難しいところです。

歴史的な経緯からみると当時の文部省が設立を推し進めた経緯から、あたかも学校側の組織で
あるかのような誤解が生じ、誰も疑問に思うことがなかったのです。これは当時のPTA役員さんや
会員さんに責任があるわけではなく、当時はそれが最適解だった(可能性がある)のです。
本当に難しい問題ですね。。。

任意加入の法的根拠

長々と話してきましたが、あくまでPTAは任意の団体でありその法的根拠は、任意加入団体である根拠しかありません。

  1. 憲法上の保障:結社の自由
    日本国憲法第21条第1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めている。この「結社の自由」には、団体を結成し、それに加入する自由(積極的結社の自由)だけでなく、団体に加入しない自由、あるいは加入している団体から脱退する自由(消極的結社の自由)も含まれると解されている
    したがって、個人の意思に反してPTAへの加入を強制することは、憲法が保障する基本的な権利である結社の自由(特に加入しない自由)を侵害する行為であり、許されない。
  2. 民法上の原則:契約自由の原則
    民法は、第521条で「何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる」と定めるなど、契約自由の原則を基本としている 。この原則に基づけば、PTAへの加入契約も、当事者である保護者や教職員の自由な意思に基づいて締結されなければならない。本人の明確な同意なく、学校への入学をもって自動的にPTA会員とするような扱いは、契約における意思表示の合致を欠くものとして、契約の有効性に疑義が生じる可能性がある。特に、保護者がPTA加入を義務だと誤信して(錯誤)、あるいは加入しなければ不利益を受けるかのような圧力を受けて(強迫)加入した場合には、民法の規定に基づき、その加入の意思表示が取り消しの対象となる可能性も指摘されている。
  3. 文部科学省の見解
    文部科学省は、PTAを任意団体として認識している 。これは、公式な通知や大臣答弁等で示されてきた。特に重要なのは、2010年4月26日付で各都道府県教育委員会等に発出された事務連絡である。この連絡では、優良PTA文部科学大臣表彰の候補団体推薦にあたり、「任意加入の団体であることを前提」として選考基準に含めるよう求めている 。これは、文部科学省が、表彰に値する模範的なPTAは任意加入の原則に基づいて運営されているべきである、という認識を示したものと言える。
  4. 政府答弁
    近年では、国会においてもPTAの任意加入が明確に認められている。例えば、2023年3月の参議院予算委員会において、岸田内閣総理大臣および永岡文部科学大臣(当時)は、PTAが任意団体であり、その入退会は保護者の自由である旨を明言している。
PTAおじさん
PTAおじさん

根拠ありすぎぃぃぃ!

PTA会員資格に関する主要な訴訟事例

これだけ根拠があればトラブルはたくさんあります。以下に訴訟の事例をまとめました。

  • 熊本PTA裁判(2014年~2017年)
    熊本市立帯山西小学校の保護者が、同校PTAを相手取り訴訟を提起した。原告の主張は、子どもが同校に転校した際、同意書や契約書の取り交わしなしにPTAに強制的に加入させられ、約1年半にわたり会費を徴収されたこと、その後、PTAが任意団体であることを知り退会届を提出したが、「会則の配布をもって入会の了承としている」等の理由で受理されなかったことなどを不当とし、支払った会費等の損害賠償を求めたものであった。
    →2017年2月10日高等裁判所での和解が成立。
    和解条項の骨子は以下の通りであった。
    • PTAは、自らが入退会自由な任意団体であることを認識し、将来にわたって保護者に十分に周知すること。
    • 保護者がPTAの任意性を知らないまま入会させられたり、退会を不当に妨げられたりしないよう、PTA側が努めること。
    • 原告は損害賠償請求等を放棄し、訴訟費用は各自が負担すること。
  • 熊本PTA裁判は、原告の金銭的請求自体は認められなかったものの、日本のPTAのあり方に大きな影響を与えた画期的な事例とされる
  • 会費返還請求
    • 2023年には鹿児島県の公立高校の教員が、給与から天引きされたPTA会費の返還を求めて提訴した
    • 入会手続きや同意がないにもかかわらず銀行口座からPTA会費が引き落とされたとして、父親が調停を申し立てた事例がある
    • 近年、強制加入による会費の自動引き落としは違法であるとして、少額訴訟により訴訟費用を含めた会費返還が認められた判例が出ているとの指摘もある
    • 年度途中で退会した保護者に対し、PTAが年度会費全額を返還したところ、保護者側が日割り計算での返還と不法行為に基づく損害賠償を求めて提訴した事例もある(このケースでは、PTAの運営方針への疑問から退会を申し入れた経緯があった)
  • 非会員の子どもに対する差別
    PTA非加入を理由に、子どもが学校生活で不利益な扱いを受けることへの懸念から紛争が生じることがある。
    • 「コサージュ裁判」と呼ばれる事例では、PTAを退会した保護者の子どもに対し、PTA会費で購入した卒業式のコサージュを配布しないとPTAが決定し、保護者からの費用負担の申し出も拒絶した。保護者は、これがPTAへの再加入圧力であり、子どもがいじめに遭う懸念があるとして、PTAの行為が不法行為にあたるとして慰謝料等を求めて提訴したとされる。
    • 非会員家庭の子どもを登校班から除外したり、記念品を配布しないといった差別的な扱いに対する問題提起は、各地でなされている。
  • 威圧的な退会手続き
    加入意思がないことを伝えたにもかかわらず、PTAから「退会届」の提出を求められ、提出しない場合は役員選出の対象から除外されず、記念品配布や行事参加ができない等の不利益を示唆する文書が送付された事例も報告されている。

まとめ

結論、PTAは任意の団体であり、加入も任意です。
気持ちはわかりますが、非会員の人や退会される人に嫌がらせをするくらいならやめたほうが
いいと思います。ただし、子どものためになる活動をPTAが担ってきた事実は変えることが
できない事実で、その中身は各PTAによって全く異なります。
今、加入されているPTAにおいて不当な扱いを受けている、もしくは非常に重い負担、責任を
抱えている方は上記を根拠に問題提起してみるのも一つだと思います。
ただし、これは本部役員や学校側が理解ある場合であり、ある意味運だと思います。
X(Twitter)を見ると、PTAに対してかなりの憎悪をもって敵視した意見を投稿している方も
見かけます。また、それに賛同する意見もたくさんあります。

重要なのは、インターネットで書かれていることを鵜吞みにせず、自分の子どもたちのために
自分で体験して自分で変革を起こすことではないでしょうか。確かに不当で、違法な状態かも
しれませんが、歴史ある組織を一から作り直すことが合理的かといえば意見がわかれるところ
だと思います。

かくいう私も、PTAの理念には賛同するものの、上部組織である日Pとの関係性には疑問を持っています。理想的には現行の組織体系を踏襲しPTOに移行し、役員の負担を軽減しながら子どもの教育環境を整えることができればいいのにと思っているところです。これに関しては後々お話していきます。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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